ダイヤのA

結城哲也

放課後

徐々に進学先が決まった生徒が増えて来た。

それに伴い、結城君が放課後に部活に顔を出す日も増えて来た。

私は待っている日もあれば、女友達と帰る事にしている。

女の友情をないがしろにしてはいけないんだ!

だが、今日に限って遊ぶ友達がいない。

なので図書室で結城君を待っていようと思って足を向ける。

廊下の向こうからクラブバックを担いだ御幸君が歩いてくる。

特別面識も無いし顔を合わせた事も無いので素通りしようとすると、

「こんにちは」と挨拶をされた。

私も会釈をして通り抜けようとしたら「あの」と声がする。

足を止めて振り返ると、同様の御幸君がいる。

さん・・ ・ですよね」

「?はい」

「俺、野球部の御幸一也と言います。哲さんには色々と世話になっていて」

「はぁ・・・・・・」

「あの哲さんを骨抜きにする人って、どんな人かなって話してみたかったんです」

「ほねぬっ!?」

すると私の反応が面白かったのか、お腹を抱えて笑い出した。

「失礼。前に二人が歩いてる所を見かけて、哲さんにあんな優しい顔をさせる人が気になって」

話てみたかったんですと続ける。

御幸君の話によれば。

結城君が御幸君に言った言葉。

仲間は大事で信頼もしているが、どこかで一歩先んじた所がある。

大事な仲間にも頼れない時に彼を支える事が出来るのは私だと。

御幸君にとって結城君の存在は特別なものだと。

だから彼の事を支え続けて欲しいと言われた。

万年帰宅部の自分には想像も出来ない事。

でも、それだけの重責を経験している彼等は特別な思い入れもあるのだろう。

改めて彼の事を知った気がする。

「にしても・・・・・・亮介さんの気持ちもわかるな」

と、訳のわからない事も聞こえる。

「ま、とりあえずなが~~~い付き合いになると思うんで、よろしく」

御幸君は一礼し、その場を後にした。

最後の言葉を理解するのは、未来の私であった。


2016/08/05